栄養のこと
2018年06月18日
【アミノ酸】たんぱく質をつくる最小単位|栄養成分辞典
添田(企画)
アミノ酸とは
アミノ酸は、たんぱく質の構成成分です。
皮膚や内臓、血液、髪の毛…などの人体を構成するたんぱく質は、アミノ酸の組み合わせによってつくられており、人間の体の約20%がアミノ酸からできていると言われています。
アミノ酸の消化・吸収
食品から摂取したたんぱく質は、消化の過程でアミノ酸やペプチド(アミノ酸同士が結合したもの)に分解され、血流にのって全身に運ばれます。
こうして各組織に送られたアミノ酸は、必要に応じて組み立てられ、臓器やホルモン、血液などの源となるたんぱく質が作られていきます。
アミノ酸の種類
人間の体を構成するアミノ酸は20種類あり、その中でも人間が体内で合成することができないアミノ酸は「必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)」と呼ばれます。
必須アミノ酸
必須アミノ酸は体内で合成できないため、食物から補う必要があります。
成人の必須アミノ酸は全部で8種類、子供の場合は「ヒスチジン」を加えた9種類が必須アミノ酸に分類されています。
必須アミノ酸の種類
・バリン
・ロイシン
バリン
分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つ。
筋肉に取り込まれ、血液中の窒素バランスの調整やアンモニアの代謝などに関与しています。
まだ、肌のハリを保つために重要なエラスチンの材料でもあります。
ロイシン
分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つ。
肝機能を高め、筋肉を強化するはたらきがあります。
ストレス緩和の効果も期待されています。
イソロイシン
分岐鎖アミノ酸(BCAA)の一つ。
筋肉のエネルギー源となり、肝機能を高め、成長促進や血管拡張にはたらきかけます。
また、神経伝達物質の材料にもなり、集中力を高める効果もあります。
分岐鎖アミノ酸(BCAA)とは側鎖に枝分かれした炭素鎖をもつアミノ酸のことを「分岐鎖アミノ酸(BCAA=Branched Chain Amino Acid)」といいます。 人間に必要な20種類のアミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンが分岐鎖アミノ酸にあたります。 分岐鎖アミノ酸は、筋肉に取り込まれ、運動時にエネルギー源となったり、たんぱく質を増加したりするはたらきがあります。 運動時に重要な役割を果たしてくれるアミノ酸です。 |
スレオニン(トレオニン)
肝臓に中性脂肪が蓄積されるのを防ぐはたらきがあります。
新陳代謝を促すと同時に、成長を促進します。
また、コラーゲン合成の材料にもなり、美肌や美髪づくりのためにも期待されているアミノ酸です。
メチオニン
血液中のヒスタミン(かゆみや痛みなどの炎症反応を起こす物質)の濃度を下げるはたらきがあり、アレルギーの発生を抑えます。
また、うつ状態の予防にも効果があることが分かっています。
リジン(リシン)
免疫抗体の材料となり、感染症の予防効果が期待されているアミノ酸です。
細胞の修復や糖代謝を助けるため、疲労回復を促進します。
また、腸管でのカルシウムの吸収を高め、骨を丈夫にするはたらきもあります。
フェニルアラニン
芳香族アミノ酸(AAA)の一つで、神経伝達物質の原料となります。
フェニルアラニンから作られるドーパミンは、アドレナリン(気分を高揚させたり、血圧を上昇させるホルモン)が作られる過程で発生します。
不足すると、記憶力が低下したり、うつ状態になりやすくなったりします。
トリプトファン
フェニルアラニンと同じ、芳香族アミノ酸(AAA)の一つ。
別名しあわせホルモンとも呼ばれる神経伝達物質「セロトニン」の原料となるアミノ酸です。
また、三大栄養素の代謝に関わるナイアシンの原料にもなります。
精神を安定させ、抑うつ状態を予防するはたらきがあります。
また、脳内のトリプトファン濃度が高まると、催眠効果が上がると考えられています。
芳香族アミノ酸(AAA)とは分子構造にベンゼン環などの芳香族基をもつアミノ酸のことを「芳香族アミノ酸(AAA=Aromatic amino acid)」といいます。 人間に必要な20種類のアミノ酸のうち、フェニルアラニン・トリプトファン・チロシンが芳香族アミノ酸にあたります。 芳香族アミノ酸は、神経伝達物質の原料となり、脳や神経のはたらきを助けます。 うつ予防や精神安定のためにも重要なアミノ酸です。 |
ヒスチジン
体内で合成できない子供にとっては必須アミノ酸となります。
子供の集中力や記憶力を高めるはたらきが期待されています。
また、成長を促進する効果や、神経のはたらきを助けストレスを軽減する効果があります。
ヒスチジンは体内で分解されるとヒスタミンとなり、食欲抑制や脂肪燃焼にもはたらきかけます。
非必須アミノ酸
人間の体内で合成できるため、必ずしも食物から補う必要はありませんが、体内で重要な役割を担っているものが多く、できるだけ摂取したいアミノ酸です。
非必須アミノ酸の種類
・グリシン
・アラニン
・セリン
・チロシン
・プロリン
グリシン
細胞の合成に関わる核酸や筋肉運動に必要なクレアチンの原料となるアミノ酸です。
また、肌のハリをつくるコラーゲンやエラスチン、抗酸化成分であるグルタチオンの材料にもなるため、アンチエイジングや美容面でも注目されています。
関節痛や腰痛の軽減効果も期待されています。
アラニン
肝臓で合成され、脳や筋肉でのエネルギー源となります。
疲労回復効果や内臓機能を促進する効果があります。
筋肉の疲労を抑えながら、長時間エネルギーを供給することができるため、持久力が必要なスポーツをする方におすすめの成分です。
また、肝臓の保護やアルコール代謝も助けます。
セリン
肌の保湿効果を高め、潤いを保つために欠かせない成分です。
また、脳を構成する神経細胞や神経伝達物質のアセチルコリンの材料にもなり、脳のはたらきを助けます。
そのため、認知症予防のためにも注目されています。
システイン(シスチン)
爪や髪の毛を構成するケラチンというたんぱく質の原料となるアミノ酸です。
爪や髪の毛を健康的に保つためにおすすめの成分です。
また、肌のターンオーバーを整え、黒いメラニン色素の産生を抑えてくれるはたらきもあるため、美肌づくりにおいても注目されている成分です。
アルギニン
成長ホルモンの材料となるアミノ酸で、免疫力アップや疲労回復効果があります。
食欲抑制や、脂質代謝を促し筋肉を強化するはたらきもあるため、ダイエット中の方にもおすすめです。
また、角質層の保湿を高める効果があり、乾燥による肌荒れの改善効果も期待されています。
チロシン
ノルアドレナリンやドーパミンなどの脳内物質の材料となり、やる気や集中力を高める効果があります。
また、疲労回復効果や認知症予防効果があるとして注目されています。
そのほか、代謝を調整する甲状腺ホルモンや黒いメラニン色素の原料にもなります。
プロリン
皮膚を構成するコラーゲンの原料となるアミノ酸です。
コラーゲンの再生を促進し、皮膚の再生力を高めます。
肌の保湿やしみ・しわ・たるみなどの予防のために大切な成分です。
また、軟骨の新陳代謝を促進し、関節痛の緩和にも効果が期待されています。
アスパラギン酸
疲労物質の乳酸の分解を促進し、疲労回復を助けるはたらきがあります。
即効性のあるエネルギー源として役立つアミノ酸の一つで、栄養剤などにもよく使われています。
また、代謝を活性化させ、体液バランスを整えたりアンモニアを解毒したりするはたらきもあります。
アスパラギン
アスパラガスから発見されたアミノ酸。
アスパラギン酸とアンモニアから生成されます。
不足すると、血中のアンモニア濃度が高まるため、十分な量を補うことが大切です。
アスパラギン酸と同様、疲労回復効果や代謝促進効果があり、スタミナ向上のために欠かせない成分です。
グルタミン酸
昆布やトマトなどに含まれている旨味成分。
アンモニアを解毒化し、尿として排泄する働きがあります。
また、脳の働きを活発にして認知症を予防する効果もあります。
グルタミン
体内で最も多いアミノ酸です。
腸管にある絨毛の栄養源となり、腸の働きを助けます。
また、筋肉の成長促進や疲労回復効果も期待されています。
アミノ酸スコア
食品によってアミノ酸の種類や含有量は異なります。
そこで、食品に含まれるたんぱく質の「質」を判定するために使われている指標が、「アミノ酸スコア」です。
アミノ酸スコアの算出
アミノ酸スコアは、食品中の必須アミノ酸が必要量の基準値をどれくらい満たしているかによって算出されるもので、その値が100に近づくほど、質の良いたんぱく質だと言えます。
例えば、豚肉の場合、
必須アミノ酸の配合量は以下のようになります。
※含硫アミノ酸はメチオニンとシステイン、
芳香族アミノ酸はフェニルアラニンとチロシンを指します
豚肉では、すべての必須アミノ酸が必要量を満たしている(=100%を超えている)ため、アミノ酸スコアは「100」となります。
続いて、精白米の場合も見てみましょう。
精白米の必須アミノ酸の配合量は以下のようになります。
精白米は、ほとんどのアミノ酸が100を超えているのですが、リジンとスレオニンが必要量を満たしていません。
この場合、一番数値が低いリジンを「第一制限アミノ酸」と呼び、アミノ酸スコアは「65」となります。
※第一制限アミノ酸:必須アミノ酸のうち、最も充足率が低いアミノ酸のことを指します。
動物性食品と植物性食品のアミノ酸スコア
また、そのほかの代表的な食品のアミノ酸スコアは以下のとおりです。
食品 | アミノ酸スコア |
牛肉 | 100 |
鶏肉 | 100 |
魚類 | 100 |
牛乳 | 100 |
卵 | 100 |
大豆 | 86 |
ほうれん草 | 50 |
トマト | 48 |
小麦粉 | 44 |
参考:1973年 FAO/WHOパタン
この表からもわかるように、一般的に肉類や魚類、乳製品、卵類などの動物性食品はアミノ酸スコアが100となっており、良質なたんぱく質だと言えます。
反対に、穀類や野菜類などの植物性食品では、アミノ酸スコアが低くなる傾向があります。
アミノ酸バランスを考える
アミノ酸スコアが100に満たない食品でも、他の食品と一緒に摂ることで食事全体のアミノ酸スコアを高めることができます。
例えば、朝食でパンを食べるときは、チーズやハムをトッピングしてみたり、ゆで卵やヨーグルトを追加するだけでも、たんぱく質の「質」がグッと高まります。
また、おにぎりを食べたいときは、おかかやたらこなどを具に選ぶと動物性たんぱく質も同時に補えるのでおすすめです。
食事のアミノ酸バランスを良くするために、ぜひ食材の組み合わせを意識してみてくださいね。
ちなみに・・・
質の良いたんぱく質を摂るためには、肉や魚だけを食べていればよさそうな気もしますが、これはあまりおすすめしません。
確かに、肉類などは優れたたんぱく質源ですが、動物性脂質を多く含むものもあるので、摂りすぎには注意が必要です。
また、不要な物質や有害な物質を体外に排泄してくれる食物繊維は、植物性食品にしか含まれていないため、穀類や野菜類、豆類なども合わせて摂るようにしましょう。
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