栄養のこと

2018年07月09日

【パントテン酸】ストレスへの抵抗力や免疫機能を高める栄養素|栄養成分辞典

添田(企画)

添田(企画)

パントテン酸とは

 

パントテン酸は、酵母の成長を促進する物質として発見されたビタミンで、かつては「ビタミンB5」とも呼ばれていました。

パントテン酸という名前は、ギリシャ語で「どこにでも存在する」という意味で、その名のとおり、さまざまな食品に含まれています。

ビタミンの中ではビタミンB群に分類されており、水に溶けやすく、熱や酸、アルカリに対して不安定な性質があります。

 

パントテン酸は、体内で「コエンザイムA」という補酵素(酵素の働きを助ける成分)に変換されます。

糖質を分解する過程ではビタミンB1と一緒に、脂質を分解する過程ではビタミンB2と一緒に、エネルギーの産生をサポートしています。

 

また、パントテン酸は、免疫力やストレス抵抗力にも関わるビタミンです。

抗ストレスホルモンである「副腎皮質ホルモン」の産生を助ける働きがあり、ストレスへの抵抗力を高めます。

免疫力に関しては、ビタミンB6葉酸などのほかのビタミンB群と一緒に「抗体」をつくりだすという役割を担っています。

そのため、パントテン酸が不足すると、風邪を引きやすくなったり、感染症にかかりやすくなったりします。

ホルモンや免疫抗体の生成を助けることで、皮膚や粘膜の健康維持に役立つビタミンです。

そのほか、HDL(善玉)コレステロールを増やしたり、神経伝達物質のアセチルコリンを合成したりする働きがあります。

 

主なはたらき

・糖質や脂質の代謝を助ける

・ストレスへの抵抗力を高める

・抗体をつくり、免疫力を高める

・皮膚や粘膜を健康に保つ

・HDLコレステロールを増やし、動脈硬化を予防する

・神経伝達物質を合成する

 

1日に摂る量

≪1日に必要とされる量 ※30~49歳成人の場合≫

・推定平均必要量:なし

・推奨量:なし

・目安量:男性5mg、女性4mg

・耐容上限量:なし

 

※用語の解説はこちら

 


 
 

不足すると…

パントテン酸は、ほとんどの食品に含まれているうえ、体内では腸内細菌によって合成されるため、不足する心配はほとんどありませんが、欠乏症として以下の症状が挙げられています。

 

 疲労感・食欲不振・便秘

パントテン酸が不足すると、代謝を助ける「コエンザイムA」の体内濃度が低下します。

スムーズにエネルギーを作りにくくなり、「疲れやすい」「だるい」などの疲労感や食欲不振、便秘などの症状がみられるようになります。

 

免疫力の低下

また、ストレスに対抗する「副腎皮質ホルモン」の分泌量が減ることや、「抗体」が作られにくくなることから、免疫力が低下します。

そのため、風邪を引きやすくなったり感染症にかかりやすくなったりしてしまいます。

 

肌荒れ・口内炎

パントテン酸は他のビタミンB群とともに、皮膚や粘膜の健康維持にも働いています。

そのため、不足することで、肌荒れや口内炎が起こりやすくなります。

また、髪のパサつきやすくなったりもします。

 

頭痛・知覚異常

さらに不足が続くと、末梢神経に障害が起こり、頭痛や知覚異常などが発症します。

手足の痺れや麻痺、激痛などの症状がみられるようになります。

 

摂りすぎると…

耐容上限量は設定されていない。     

通常の食事を摂取している人において、パントテン酸の過剰摂取により健康障害が発現したという事例は報告されていません。

また、パントテン酸は水溶性なので、過剰に摂取したとしても余分な分が体外に排出されます。

そのため、比較的に蓄積されにくいということもあり、上限量は設定されていません。

ただし、パントテン酸カルシウムの大量投与の実験により、一部の被験者に吐き気、食欲不振、腹痛がみられた、という報告があります。

(この実験において、上限量を設定するほどのデータは不十分だったため、耐容上限量は定められていません。)

一般的な食事においては、過剰症のリスクはほとんど心配ありませんが、サプリメントなどによる大量摂取には注意が必要です。

 

こんな人におすすめ

✓ストレスが多い

✓風邪を引きやすい

✓疲れやすい

✓食欲がない

✓口内炎ができやすい

 

多く含まれる食品

パントテン酸を多く含む主な食品

食品名 1食分の目安量(g) 成分含有量(mg)
レバー(鶏) 70 7.07
レバー(豚) 70 5.03
レバー(牛) 70 4.48
挽き割り納豆 50(1パック) 2.14
たらこ 60(1腹) 2.20
にじます 100(1尾) 1.63
アボガド 80(1/2個) 1.32
うなぎ蒲焼 100(1串) 1.29

 

パントテン酸は、肉類、魚類、豆類、野菜類など幅広い食品に含まれています。

動物性食品では特にレバーに豊富です。タラコやにじます、うなぎなどの魚介類にも多く含まれているため、意識して食べるようにしましょう。

植物性食品では、納豆やアボガド、ブロッコリー、小麦胚芽などに多く含まれています。

 

摂取するときのポイント

不足しやすいのは

パントテン酸は一般的には不足しにくいビタミンだと言われています。

ただし、アルコールやカフェインを摂ると、パントテン酸の消費量が増えるため、これらを毎日多量に摂っている人は、不足しないように注意が必要です。

また、ストレスが多い人もパントテン酸が消耗されやすいので、意識して摂取するようにしましょう。

そのほか、糖尿病や腸炎を患っている場合も不足することがあります。

 

効率的に補うには

パントテン酸をはじめとするビタミンB群のほか、ビタミンCビタミンEもストレスに対抗するビタミンとして知られています。

パントテン酸は抗ストレスホルモンの「副腎皮質ホルモン」をつくり、ビタミンCは副腎の働きを助け、ホルモンの分泌を促してくれます。

また、ビタミンEには、副腎皮質ホルモンの分泌をコントロールする働きがあります。

ストレスを感じる時や疲労感がある時は、パントテン酸と一緒にビタミンCやビタミンEを摂るとより効率的です。

 

調理のポイント

パントテン酸は、熱に弱いため、缶詰や冷凍食品、加工食品では含有量が少なくなります。

調理をする際は、シンプルな調理法であまり熱を加え過ぎないようにしましょう。

野菜や果物から摂る場合は、できるだけ生で新鮮な状態で食べるようにするとパントテン酸を損なわずに補うことができます。

また、水に溶けて流れ出てしまう性質があるため、加熱調理する際は、煮汁ごと食べられる煮物やスープにするのがおすすめです。

茹でるよりも蒸すほうが、損失を抑えることができます。

 

添田(企画)

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添田(企画)

食べることが大好きな管理栄養士です。食と健康にまつわるお役立ち情報をお届けします♪

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